「海上民兵」乗船か  中国漁船の一部  尖閣周辺でも航行 2022.9.12

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2022年9月11日

中国が海洋進出を強めるなか、アメリカの研究機関が「海上民兵」が乗っている可能性があると特定した中国漁船の一部が、東シナ海でも活動し、沖縄県尖閣諸島周辺の海域を航行していたことがNHKの分析でわかりました。中国漁船に実際、「海上民兵」が乗っていたかどうかは分かりませんが、海上保安庁も漁船の動きを把握していて、活動を注視しています。

10年前の9月11日、日本政府が尖閣諸島を国有化して以降、周辺の海域では、中国当局の船が、領海侵入や日本漁船への接近を繰り返しています。

こうした中、アメリカのシンクタンクCSIS戦略国際問題研究所が注目するのが、軍事的な訓練を受けた「海上民兵」と呼ばれる人員が乗り組む中国の大型漁船です。

これらの漁船は、通常の漁業活動に加えて、海域に居座る示威活動や偵察・監視などを担っているとされています。

南シナ海では、中国と領有権をめぐって対立するフィリピン政府が、自国の排他的経済水域とする海域で、去年3月、200隻を超える中国漁船が停泊し続け、アメリ国務省は、漁船に「海上民兵」が乗り組んでいるという見方を示していました。

この際、中国外務省の報道官は、「中国側の漁船の作業は合法だ」などと正当性を主張したうえで、「中国の漁民をいわゆる『海上民兵』と呼ぶ理由がわからない。下心と悪意がある」と反発していました。

今回、NHKでは、CSISが中国側の公開情報などをもとに、南シナ海で活動し、「海上民兵」が乗っている可能性があると特定した漁船、122隻について、船の位置情報を発信するAIS=船舶自動識別装置のデータをもとに分析しました。

その結果、去年1年間でこのうちの10隻余りが、尖閣諸島から200キロ以内の東シナ海でも活動していたことがわかりました。

中には尖閣諸島の領海や接続水域を航行した船も確認できました。

中国漁船に実際、「海上民兵」が乗っていたかどうかは分かりませんが、海上保安庁も、こうした東シナ海での動きを把握していて、その活動を注視しています。

CSISのグレゴリー・ポーリング上級研究員は、「海上民兵を活用し、平時から圧力をかけ続けることで、監視・警戒する海上保安庁に負荷をかけている」と分析しています。

 

アメリカのシンクタンクCSIS戦略国際問題研究所によりますと「海上民兵」は軽武装をしているほか、特別な訓練を受けたり、中央政府から燃料代や船の改修のための補助金が支給されたりしているということです。

表向き漁業をしていますが、国の政治的や軍事的な目的を達成するためにさまざまな活動をするとされています。

CSISは去年11月に発表した報告書で、中国側の公開情報などをもとに広東省海南省を母港とし、南シナ海で活動する合わせて122隻の漁船を、海上民兵の船として特定し、それらの船のリストを公表しています。

CSISの分析では、これらの漁船は領有権を争う海域などに大量に出航して居座る示威活動のほか、体当たりなどの妨害、監視や偵察の活動を担っているということです。

海上保安庁などによりますと、中国政府は「民兵」については、法律などで武装力として位置づけていますが、「海上民兵」については公式な見解を示していないということです。

 

アメリカのシンクタンクCSIS戦略国際問題研究所のグレゴリー・ポーリング上級研究員は、今回、東シナ海で確認された漁船について、何らかの移動のため航行していたか、軍やほかの海上民兵との共同訓練に参加していた可能性もあると指摘したうえで、活動や意図についてさらなる分析が必要だとしています。

ポーリング上級研究員は、「中国側としては、海上民兵を活用し、平時から圧力をかけ続けることで、監視、警戒する海上保安庁に負荷をかけている」と分析しています。

その上で、「中国の目標は、尖閣諸島周辺と南シナ海全体を実効支配することだ。軍事力には及ばない海警局の船と民兵船を利用し続け、南シナ海と同じように尖閣諸島周辺もゆっくりと、着実に支配を強めていることに対して、日本側としてどう対応していくか考えなくてはならない」と指摘しました。

また、中国の海洋政策を研究している筑波大学の毛利亜樹助教は「尖閣諸島をめぐっての緊張は、国力を増大させてきた中国とアメリカの優位をめぐる競争という大きな対立構造の一部だ。中国の挑戦を直視しつつ、複合的な対応をしていく冷静さと視野の広さが日本には必要だ。軍事衝突へのきっかけを日本側から作ることは大きな失敗だ。現場海域では海上保安庁がいまやっているように中国を静かに押し返しつつ、外交で国際社会を味方につける対応に尽きる」と指摘しています。

 

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