日本の自動車税は「罰金」同然  ものを大切にすると税金が高くなります 2022.5.28

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merkmal-biz.jp

2022.5.22

「罰金が来ました。日本の誇る昭和の名車を大切に乗った罰金ですよ」

 筆者(日野百草、ノンフィクション作家)の関わる旧車のオーナーズクラブ、毎年5月のゴールデンウィークあたりになるとこの「罰金」の話となって久しい。

「車を大事に何十年も乗ると罰金が来る国なんて日本だけでしょう」

 もう笑うしかないといった様子のオーナーたち、昭和から平成初期にかけての国産車の多いこのクラブ、全員の「罰金」を合わせたら大した額になるだろう。

 その「罰金」とはもちろん自動車税。それも「平成13年度税制改正」からずっと続けられる、新規登録から13年を経た車両の増税という名の「罰金」である。ガソリン車(ハイブリッド除く)は新規登録から13年たつと自動車税が高くなる。

 もちろん軽自動車も例外ではなく、元の税額が少ないながらもパーセンテージでみると約20%も増税(1万800円が1万2900円)となる。同年の「グリーン化特例」で減税した分をそっくり転嫁した形だが、筆者も個人的に納得できない話、自分が課せられるからという話ではなく、あまりにエビデンスが不足しているというか、はっきり言えば意味不明の税金である。

「車検6回で罰金なんてね、わけがわからない」

 この国は車検時にまとめて払う重量税も古い愛車を大切にしていると「罰金」を取られる。0.5t単位で税率が変わるが、重量税の場合13年はもちろん、新規登録から18年以上でさらに上がる。もちろんこのオーナーたちの大半は「罰金」込みで満額の税金を払っている。

「税金を払わないと言っているわけではありません。その根拠があまりに不明で、それも何重にも取り過ぎだと言っているのです」

いまだに多くの国民が、自動車税地方税)は車が主に道路を使うのだから負担して当然、と思っているが、自動車税はすでに目的税道路特定財源)ではない。2009(平成21)年の道路特定財源制度廃止以来、国や自治体が何にでも使える一般財源である。

 もちろん重量税もそうだ。ガソリン税一般財源だ。つまるところ、不景気と人口減少により財源の厳しい国や自治体の

「便利なお財布」

になってしまっている。

 これに関して衝撃的なSNSの投稿をしたのがわれらの味方、天下の日本自動車連盟JAF)で、

自動車税を含めガソリン税・消費税などで乗用車には毎年約11.57万円の税金が課せられています。生活必需品なのに、こんなにかかるなんて、こんなの過重で負担過ぎます。補助金ではなく、抜本的な見直しを」

とストレートな発信を展開した。

「Hナンバーがある国みたいにしろとは言わないけど、取り過ぎなんですよ」

 Hナンバーとはドイツの自動車税の制度で、製造から30年以上たった車は条件を満たせば工業製品の文化遺産に認定され、自動車税や車検代などが優遇される。イギリスにも同様の制度があり、こちらは1973年以前の車は税金が免除される。ポルシェ911(901型)も、ジャガーEもアストンマーチンdb5も国の大切な文化遺産として守られる。そして、それを守るユーザーは優遇される。

「日本ではトヨタ2000GTだって罰金だからね」

 オーナーたちは力なく笑うが、自動車文化の違いなのか日本は守られないどころかトヨタ2000GTすら罰金を喰(く)らう。マツダコスモスポーツいすゞ117 クーペも日産スカイラインC10系も罰金対象だ。

 そこまでのクラシックカーでなくとも、マツダのユーノスロードスターやスバルのアルシオーネ(VX含む)、日産レパードなどの1980年代から1990年代を駆け抜けた名車も所有者は古い車を大切に所有しているだけで、あらゆる製造から13年、および18年を経た車には罰金が科せられる。この国は技術者が、現場の工員たちが作り上げた日本の誇りを大切に乗っていただけで税金を課す。

 JAFは先のSNSと同様、

「新規新車登録から13年経過すると重い税率が課されます(対象:自動車税自動車重量税)。SDGs(持続可能な開発目標)てよく聞きますけど、まだ持続可能な車を所有しづらくする税制ってどうなんでしょう? 長く大切に使うってエコじゃないんですか」

と発信しているが、その問いかけはもっともである。

 

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