山形県酒田市中一少女いじめ自殺事件 一向に進展せず また学校と市教委の隠ぺいか 2022.1.29

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bunshun.jp

「せっちゃんが天国へ旅立ってからもうすぐ1年になります。この1年は本当に長かったですが、せっちゃんが誰からイジメを受けていたのか、死へ追いやったのは誰なのかすら未だに私たちにはわかりません。せっちゃんを追い詰めた人が憎いです」

 2021年2月12日朝、山形県酒田市立第一中学校1年生だった石澤準奈(せつな)さん(13)が校舎4階から飛び降りて亡くなった。娘を追い詰めた人たちへの怒りを隠さないのは、準奈さんの父親だ。

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※本記事ではご両親の許可を得た上で、準奈さんの実名と写真を掲載しています。編集部も、準奈さんの死の真相解明の一助になることを願い、可能な限り事実に忠実なかたちで伝えるべきだと考え、実名と写真の掲載を決断しました。

 

 

ある日愛娘が突然いなくなり、後から判明したのは準奈さんがイジメを受けていたという事実。しかし一向に原因が究明されない事態に、準奈さんの両親は苦しみ続けている。

イジメと準奈さんの自殺の因果関係については、2021年9月に設置された第三者委員会によって現在も調査が続けられている。しかし両親が求めるイジメについての真相究明は、まったくと言っていいほど進んでいない状態だという。

「イジメていたのは誰なのか」は公開されず
 第三者委員会は昨年9月、準奈さんの死の理由について生徒たちにアンケートを実施した。両親はアンケート結果の閲覧を望んでいたが、閲覧が許可されたのは実施から4カ月後の2022年1月21日だった。

その日の午後3時頃に準奈さんの両親は学校へ向かったが、手渡されたアンケート結果を見て頭が真っ白になった。

「アンケートは、せっちゃん本人から相談を受けたか、イジメの現場を目撃したか、などの項目について同級生たちが答える形式でした。多くの同級生が、自分が見たり聞いたりしたことを一生懸命書いてくれていましたが、『せっちゃんをイジメていたのは誰なのか』という私たちが一番知りたい部分はすべて黒塗りで潰されていました。同時に行われていた保護者用のアンケートについては、公開すらしてもらえませんでした」(父親)

 

同日、準奈さんの両親はショックから立ち直れずにいる状態で、第三者委員会の弁護士や医師、教育委員会の担当者などの立ち会いのもと、聞き取り調査を受けた。調査の中で遺族が名前を黒塗りされた加害者生徒について質問すると、第三者委員会の委員から意外な言葉が返ってきたという。

「『アンケートでイジメを行っていたと名前があがっている生徒への調査はどうなっていますか?』と聞くと『まだしていません』と言われたんです。『いつ話を聞く予定ですか?』と聞いても無言になるだけで、期末テストなどを理由に時期は明言しませんでした。そもそも第三者委員会の調査では家庭環境やせっちゃんの性格についてばかり聞かれ、おそらく『イジメよりも家庭環境に問題があった』という結論を出したいのだと思います」(同前)

準奈さんが受けていたと見られるイジメの徹底究明ではなく、早期の問題決着だけを望む姿勢は教職員の言動からも感じたという。

 

「担任の先生はせっちゃんが亡くなった直後に、娘とのトラブルが指摘されていた女子生徒ら複数名に対して『あなたたちは一緒にいないほうがいい』と、声を掛けていたそうです。真相究明ではなく、むしろそれをごまかすような行動に耳を疑いました。担任の先生は今では私の電話にも出なくなりました。

 他にもせっちゃんが所属していたバレー部の前顧問が部員の保護者に対して、『もう原因はわかりましたし、解決しました』と平然と答えたこともあったそうです。何も解決していないのになぜそのような発言をしたのか信じられません」(同前)

「せっちゃんは命を失っているのに…」
 娘を失い、その原因究明のメドも立たない。準奈さんの父親は、苦しかった1年間をこう振り返る。

「本当に長かったです。今までいることが当たり前だったせっちゃんが、どこを見渡してもいない。いまだにそれが現実と信じられず、自分が何をしていたか思い出せない日もたくさんあります。娘が天国へ行ってしまった金曜になると、いつも喪失感が襲ってくるんです。この前、せっちゃんの妹のバレーボールチームが山形で1位になったんですよ。せっちゃんが天国から応援してくれたのかな。せめて、せっちゃんをイジメた生徒が誰かを知りたいと思うのはダメなことでしょうか。せっちゃんは命を失っているのに……」

 そう話す父親の目からは、涙が溢れ出ていた。母親は、心身の調子を崩す日々が続いている。

 

「中学へ入学してからは笑顔が少なくなり……」
「日が経つにつれて、立ち直るどころか家事などいろいろなことができなくなり、自分で何をしているのかがわからなくなる時が増えました。自分の娘のことなのに今でも実感がなく、やっぱり信じられなくて受け入れられないんです。受け入れてしまったら、生活できなくなるような気がして。毎晩のようにせっちゃんの写真を見返していますが、小学生の頃は笑顔なのに、中学へ入学してからは笑顔が少なくなり……。登校する時のせっちゃんの小さな後ろ姿が今も忘れられません」

 遺族は情報を求めているが、第三者委員会の調査は滞っていると言わざるを得ない。1月28日、この痛ましい事件について酒田市教育委員会の教育長が会見を行い、「3月末をめどに報告書をまとめる」と語った。

 2月12日の命日までに天国の準奈さんに調査結果を報告することは叶わなかった。遺族の時間は1年前からずっと止まったままである。

 

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