殺人罪のみならず、窃盗罪にも濫用される刑法39条 おかしい 2021.11.11

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2021.11.11

11月4日、神戸地方裁判所は、祖父母と近所の女性ら3名を殺害し、他2名に対する殺人未遂などの罪に問われた30才の男性被告人に対し、無罪判決を下した。「男性は事件当時、心神喪失状態だったとの疑いが残る」と判断され、刑法39条第1項の心神喪失条項が理由となったのだ。実はこのような重大事案の他に、近年では窃盗等の軽犯罪にも刑法39条が頻繁に適用されていることをご存じだろうか。1907年に制定された刑法のこの条文は果たして現代の諸事情に鑑みて妥当なのか。諸外国の障害者に対する刑法事情と合わせて考える。

 

( 中略 )

 

 ところで、統合失調症による殺人事件のように社会から大きく注目される事件のほか、実は全刑法犯の約40%を占める「窃盗罪」についても、最近は刑法第39条が頻繁に利用されている。これは「クレプトマニア」という「泥棒をする精神障害」が新しく定義されたためである。この病気は、量販店での万引きを起こすというものだ。この精神病が医学的に定義されると、弁護側は無罪を狙い、窃盗犯が「精神障害だから免罪・減罪となるべき」とこぞって主張した。裁判所も当初は、執行猶予期間中に再度窃盗をした被告人に対して再度の執行猶予を付けるなどして対応していたが、それでは商品を盗まれる側にしてみれば、窃盗犯を再び世に解き放つだけであり、警察や裁判所の意味が無いのではないか。
(※ただし、最近になってようやく、”原因に於いて自由な行為”という理論で処罰されるようになった。窃盗をしてしまうのは病気だから仕方ないが、家から出て商店に入ったのは自分の意志であり、商店に入店したら窃盗をしてしまうとわかっているなら家から出なければ窃盗も起きない。よって家から出た時点では本人の意思であるため、その延長で万引きが起きても家から出たという自由意思の結果である、という理屈である。)

 刑法とは、「社会に有害な存在を隔離する」という考えが重要である。その者が永遠に有害ならば永遠に隔離し、有害性が消滅したときに隔離も終了するという刑事政策が必要である。今の日本に足りないのは『社会秩序を守る』という精神ではないのか。

 時代と一般感覚に合わせて、刑法第39条は、「刑罰の執行を受ける能力を回復するまで、または被告人が公判能力を回復するまで治療する」に改正すべきであろう。

 

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