河野大臣、政治資金規正法違反の疑い 「後援会バス旅行」を収支報告書に記載せず 2021.9.17

**********************************************************************************************

www.dailyshincho.jp

 

週刊新潮  2021年6月10日号

 これで「次代の総理」になれるのか。「次の首相」のアンケートを取れば、人気ナンバー1の河野太郎・ワクチン担当相(58)。が、行政に大混乱を招き、「敗軍の将」となっているのは周知の通りだ。足元を見れば、ご自身も関与するバス旅行の収支が闇に消えていて……

ツイッターのフォロワーは90万人を超す。発信力が強み〉

 河野大臣を評する際のメディアの決まり文句である。

〈舌鋒鋭い政府批判で名をとどろかせた〉

〈政策面での「突破力」が買われる〉

 もっとも、「元号は使わない」「ハンコは不要」などの“暴言”は印象に残るが、政治的な実績は、と問われれば何だろうか。防衛相時代の「イージス・アショア」の配備計画停止は確かに突破力こそ感じるものの、根回しなしの決断は大混乱を招いた。外相時代に100カ国以上を訪問したのもよく指摘されるけれど、ただ行っただけの「スタンプラリー外交」と揶揄されたのも事実である。

 しかし、それでも国民的人気が高いのは確かで、ほとんどの世論調査で次期総理に相応しい「ナンバー1」との票を集めるのは、政界の人材不足の象徴か。

 人気を買われて1月には、菅総理直々の命でワクチン担当大臣に就任。本人にとっては大きなチャンス。これで成功すれば総理の座が見えてくる。そう踏んだであろうが、意外とメッキが早く剥がれたのはご承知の通りだ。

 ワクチン行政は、これまでにない広範な組織の連携が必要。厚労省はもちろん、総務省防衛省地方自治体など、さまざまな組織が関係する。それらを束ね、調整するのが仕事であるが、荷が重かったのか。

「非常に優秀であることは間違いないとは思いますが、一番の問題点は、スタンドプレーをすることです」

と述べるのは、厚労行政に詳しい、ノンフィクション作家の辰濃哲郎氏。

 就任直後の1月、坂井学官房副長官が「6月までにワクチンを確保する見込み」と述べたのに対し、「齟齬がある。削除してください」と指摘。副長官が「発言は撤回しない」と反論する騒動があったが、

「あれが典型です。大した“齟齬”でもないのに、公の場であれだけ強く否定したために、大問題が発生したように取られてしまった。3月にも、小林史明補佐官が“会場を選ぶことで、接種ワクチンを選ぶことができる”との趣旨の発言をしたのに対し、“勇み足だ”と述べた。しかし、実際には小林さんの発言は間違いではなかったのに、河野さんの発言をきっかけに厚労省は方針転換を迫られました」(同)

 現場は混乱するばかりだ。

「彼の発言からは“俺の了解を得なければ、何事も進まないんだ”という驕りが見えました。側近や、苦労しながら現場で働く人を腐す必要はない。一緒に働く人はたまらないでしょう」(同)

 もっと大人にならないと調整役はとてもこなせない。ましてや一国の宰相など、到底つとまらないのは明らかなのである。

そんな河野大臣のもうひとつのイメージが「クリーン」だ。利権とは無縁に見えるし、政治家に付きまとう「カネ」のスキャンダルが報じられたことは皆無である。

 ところが、だ。

 前章同様、こちらの評価も「メッキ」で、見掛け倒しに過ぎないのか。

 河野大臣の地元・神奈川15区(平塚市茅ヶ崎市、大磯町、二宮町)を取材してみると、看過できない疑惑に行き当たるのだ。

 河野大臣の後援会では、毎年1度、「バス旅行」を開催している。

 参加経験のある、さる地元市議が言う。

「昨年はコロナで中止になりましたが、それまではほぼ毎年ありました。日帰りで行き先は年によって変わる。東京方面が多く、国会に寄って、劇団四季の観劇など、都内の観光地を回るパターンが多いかな。東京以外なら、伊豆、房総方面に行ったりしましたね。年によって異なりますけど、参加者は200人くらい。バス5台ほどに乗車して行きます。もちろん会費制で、行き先やコースによって、1万円前後の実費を支払いますよ」

 1回で200万円前後のイベントと推測できる。

 この旅行の特徴は、河野大臣やその妻、事務所が総出で関わることだ。

 やはり参加経験のある、別の市議が言う。

河野太郎大臣、政治資金規正法違反の疑い 「後援会バス旅行」を収支報告書に記載せず
国内 政治 週刊新潮 2021年6月10日号掲載

シェア
ツイート
ブックマーク
河野太郎
報告書も変(他の写真を見る)


 これで「次代の総理」になれるのか。「次の首相」のアンケートを取れば、人気ナンバー1の河野太郎・ワクチン担当相(58)。が、行政に大混乱を招き、「敗軍の将」となっているのは周知の通りだ。足元を見れば、ご自身も関与するバス旅行の収支が闇に消えていて……。

 ***

【写真】参加者のSNSに記された旅行の様子

ツイッターのフォロワーは90万人を超す。発信力が強み〉

 河野大臣を評する際のメディアの決まり文句である。

〈舌鋒鋭い政府批判で名をとどろかせた〉

〈政策面での「突破力」が買われる〉

 もっとも、「元号は使わない」「ハンコは不要」などの“暴言”は印象に残るが、政治的な実績は、と問われれば何だろうか。防衛相時代の「イージス・アショア」の配備計画停止は確かに突破力こそ感じるものの、根回しなしの決断は大混乱を招いた。外相時代に100カ国以上を訪問したのもよく指摘されるけれど、ただ行っただけの「スタンプラリー外交」と揶揄されたのも事実である。

 しかし、それでも国民的人気が高いのは確かで、ほとんどの世論調査で次期総理に相応しい「ナンバー1」との票を集めるのは、政界の人材不足の象徴か。

 人気を買われて1月には、菅総理直々の命でワクチン担当大臣に就任。本人にとっては大きなチャンス。これで成功すれば総理の座が見えてくる。そう踏んだであろうが、意外とメッキが早く剥がれたのはご承知の通りだ。

 ワクチン行政は、これまでにない広範な組織の連携が必要。厚労省はもちろん、総務省防衛省地方自治体など、さまざまな組織が関係する。それらを束ね、調整するのが仕事であるが、荷が重かったのか。

「非常に優秀であることは間違いないとは思いますが、一番の問題点は、スタンドプレーをすることです」

 と述べるのは、厚労行政に詳しい、ノンフィクション作家の辰濃哲郎氏。

 就任直後の1月、坂井学官房副長官が「6月までにワクチンを確保する見込み」と述べたのに対し、「齟齬がある。削除してください」と指摘。副長官が「発言は撤回しない」と反論する騒動があったが、

「あれが典型です。大した“齟齬”でもないのに、公の場であれだけ強く否定したために、大問題が発生したように取られてしまった。3月にも、小林史明補佐官が“会場を選ぶことで、接種ワクチンを選ぶことができる”との趣旨の発言をしたのに対し、“勇み足だ”と述べた。しかし、実際には小林さんの発言は間違いではなかったのに、河野さんの発言をきっかけに厚労省は方針転換を迫られました」(同)

 現場は混乱するばかりだ。

「彼の発言からは“俺の了解を得なければ、何事も進まないんだ”という驕りが見えました。側近や、苦労しながら現場で働く人を腐す必要はない。一緒に働く人はたまらないでしょう」(同)

 もっと大人にならないと調整役はとてもこなせない。ましてや一国の宰相など、到底つとまらないのは明らかなのである。

モミジ狩りに劇団四季
参加者のSNS
参加者のSNSに記された旅行の様子(Facebookより)(他の写真を見る)

 そんな河野大臣のもうひとつのイメージが「クリーン」だ。利権とは無縁に見えるし、政治家に付きまとう「カネ」のスキャンダルが報じられたことは皆無である。

 ところが、だ。

 前章同様、こちらの評価も「メッキ」で、見掛け倒しに過ぎないのか。

 河野大臣の地元・神奈川15区(平塚市茅ヶ崎市、大磯町、二宮町)を取材してみると、看過できない疑惑に行き当たるのだ。

 河野大臣の後援会では、毎年1度、「バス旅行」を開催している。

 参加経験のある、さる地元市議が言う。

「昨年はコロナで中止になりましたが、それまではほぼ毎年ありました。日帰りで行き先は年によって変わる。東京方面が多く、国会に寄って、劇団四季の観劇など、都内の観光地を回るパターンが多いかな。東京以外なら、伊豆、房総方面に行ったりしましたね。年によって異なりますけど、参加者は200人くらい。バス5台ほどに乗車して行きます。もちろん会費制で、行き先やコースによって、1万円前後の実費を支払いますよ」

 1回で200万円前後のイベントと推測できる。

 この旅行の特徴は、河野大臣やその妻、事務所が総出で関わることだ。

 やはり参加経験のある、別の市議が言う。

「ほとんどの回で、『世話役』として河野事務所の秘書さんが同行します。朝から晩までバスに乗り、各地を同行するんですね。行く先が都内の場合は、国会や霞が関に寄る。で、太郎さんが出てきて、挨拶をするんです。また、『代理』として、奥さんが参加することもしばしば。バスには乗りませんが、目的地に向かう途中のサービスエリア(SA)などに先回りしている。で、バスが停まると“ありがとうございます。今日一日、楽しんでください”などと挨拶して回るんです」

 こうした旅行の様子は、地元の県議や市議のSNS上でも確認できる。

〈今日は河野太郎後援会のバス旅行で、日本屈指の能楽殿「身曾岐神社」とモミジと楓の紅葉狩りに参加してきました〉

 と、2018年11月の様子をFacebookに投稿したのは、さる神奈川県議。

〈バス6台で、秋の長野を堪能してきました〉

 あるいは、

〈今日は、河野太郎後援会主催のバス旅行です。議員会館に行ってから、劇団四季の“アラジン”の観劇です♪〉(さる茅ヶ崎市議の15年12月のFacebook

〈今日は、これから河野太郎後援会の国会議事堂&上野動物園へのバス旅行に参加します〉(別の茅ヶ崎市議の14年2月のFacebook

 また、後援会の婦人部や、地域ごとという単位での旅行もある。

「私が行った範囲では、静岡のお寺巡りや国会議事堂見学をしました。参加者はバス1台で50人くらい。料金は昼飯代込みで1万2千~3千円でしたかね。秘書が添乗し、奥さんがSAで挨拶。国会では太郎さんも挨拶に来てくれました」(婦人部の旅行参加者)

「僕が行ったのは、2年くらい前、太郎さんが外務大臣だった時かな。バス1台に乗って東京に出て、まず築地で昼食。外務省の近くまで行って、太郎さんが挨拶。迎賓館に向かって見学をして、浅草で自由行動。で、地元に帰ってきました。会費は7千~8千円くらいでしたね」

 

ここまでなら、何の問題もなく、どこにでもある、政治家の地盤涵養(かんよう)行為の一環だ。しかし問題は、これら全てについて、政治資金収支報告書への記載がまったくないことである。

 政治資金規正法では、団体にまつわる、すべての収支を収支報告書に記載するよう義務付けているのは周知の通り。

 河野大臣の場合、関係する政治団体は二つだ。

 資金管理団体である「河野太郎事務所」。そして、政党支部である「自由民主党神奈川県第15選挙区支部」。両団体はいずれも河野大臣自身が代表を務め、神奈川県選挙管理委員会に登録。収支報告書を提出している。現在、見られるのは17、18、19年の3年分だが、両団体の報告書のどこにも、バス旅行のいかなる記載もないのである。

 また、公益財団法人の「政治資金センター」では、遡ること11年までの収支報告書を保管し、ネット上で公開している。それを見ても、両団体の報告書にはバス旅行の記載はない。

 さらに、だ。

 このバス旅行の主催者であるはずの「河野太郎後援会」に至っては、これだけ大規模な「政治活動」を毎年、あちらこちらで行っているにも拘わらず、政治団体の届出すらしていない。従って報告書の提出もない。

 100万単位の金銭の出入りがあるバス旅行の収支が、約10年間に亘(わた)り、まったくの「闇」に包まれてしまっているというわけである。

「今回の事例は非常に問題があると思います」

 と述べるのは、政治資金に詳しい、日大大学院の岩井奉信講師。

政治資金規正法は、あらゆる政治活動のカネの流れを透明化するのが趣旨です。この場合、河野太郎という政治家個人に関わるイベントの収支ですから、河野大臣の関係する政治団体のどこかに記載されていないとおかしい。後援会が政治団体を持たず、一方で議員も事務所も関与しているのですから、河野大臣の関係団体に記載するのが当然。政治資金規正法上の不記載に問われる可能性もあります」

 また、やはり政治資金に詳しい神戸学院大学法学部の上脇博之教授も言う。

「後援会が政治団体になっていない時点で極めて問題です。大臣や夫人、事務所が明確にバス旅行に関与しているのであれば、これは本来、大臣に関係する政治団体が記すべきでしょう」

 不記載といえば、安倍前総理の秘書が「桜を見る会」の前夜祭の収支を記載せずに、略式起訴されたのが記憶に新しいところである。

また、地元を回ると気になる話も耳にする。

「バス旅行には行ったことがあるけど、他のツアーに比べて全然高くないと思った」

「参加したことはあるけど、詳しいことを言うとまずいことになるから言えない」

 万一、旅行が赤字になり、その差額を事務所が補填でもしていたら、これはまた、公選法で定められた寄付の禁止などに抵触する可能性も。菅原一秀経産相議員辞職した容疑と同様だ。そうした疑念を持たれず、透明化するために記載義務があるのに、それすらしていないのだから、疑惑を持たれても仕方ないのである。

 

河野大臣といえば、「政治とカネ」の問題にも厳しい姿勢を見せてきた。

「太郎さんはクリーン。ケチで有名で、事務所に行っても水しか出てこない。それくらい厳しい人」(地元後援者)

 かつては会見で「古い自民党は『政治とカネ』の問題をひきずってきた」と指摘。「政治家の財布を資金管理団体と政党支部の二つにした方が透明性は増す」が持論だ。しかし、そう述べるご本人自ら関わるイベントの会計が、報告すらされていないのだから、何をかいわんや。

 しかも、である。

 河野大臣関係のデタラメな政治資金の扱いはこの点だけに留まらない。やはりバス絡みで、もう一件、不可解な資金処理が見える。

 河野大臣は、毎年秋に都内のホテルで「河野太郎と21世紀の日本を語る会」なる、政治資金パーティーを開催している。このパーティーに際し、地元の選挙区から参加するメンバーに関しては、希望者のみ、事務所がバスを手配し、送り迎えをしている。

 参加者によれば、

「乗ったことがありますよ。秘書さんが2千円ほどを集めます。東京から選挙区への電車代と同じにしていると言っていました。で、事務所がバス会社にまとめて料金を支払うのです」

 実際、このバス代金について、先に述べた大臣関係の政治団体のうち、「河野太郎事務所」の政治資金収支報告書の「支出」の欄には毎年記載がある。どの年もおおよそ35万円前後だ。しかし、それに対応する「収入」の欄を見ると、当然あるべき、これに当たる記載が抜け落ちているのである。これももちろん不記載。加えて前出・上脇教授によれば、

「全体の収支が合いませんよね。入るべき35万円が記載されていないのであれば、その額は実際何に使われたのか。金の行方はブラックボックス。言わば『裏金』となっているのです」

 と、こちらも何やら臭うのである。

「クリーン」なはずの大臣に提起された二つの疑惑。当の河野事務所はどのように答えるのか。

 まず、疑惑の2点目、資金パーティーの送迎バスについては、

「質問を受け収支報告書を確認したところ、収入の記載が無いことがわかりましたので調査の上、必要な措置を講じたいと考えております」

 と誤りを認める。

 が、1点目の「バス旅行」については、

「関係政治団体からの収支がないことから計上を行っていません」

 と、要は、自らの団体とは関係なく、後援会の問題だ、と言いたいようだ。

 しかし、自らがどっぷり関わるイベントについて、全く報告がされていないのに知らぬ存ぜぬではあまりに無責任。日頃誇る「発信力」の欠片(かけら)も感じられない。

 また、そもそも、

「実は10年程前まで『河野太郎後援会』は政治団体として登録されていました。それが『河野太郎事務所』と名前を変えた上に解散。代表は太郎さんの秘書でした」(古参の地元後援者)

 というから、河野事務所と後援会自体が密接不可分。関係ないでは済まされないのは明白である。

「彼は、異端児と言われ、旧弊に囚われないタイプの政治家と思われていますよね。しかし、実態は3世政治家で地盤を継ぎ、旧来通りの慣習であるバス旅行で地盤を固めている。カネの処理も不透明」(同)

 イメージばかりが先行する河野大臣だが、具(つぶさ)に観察すると見えてくるのは、それとはかけ離れた一面だ。我々国民は、ワクチン大臣の人気に決して踊らされない「免疫」が必要か。

 

**********************************************************************************************